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「老後2000万円」を聞いて、最初は他人事だと思っていた
2019年に金融庁が「老後30年間で2000万円の金融資産が必要」という報告書を出したとき、僕は33歳だった。ニュースで騒いでいるのを横目に、「まあそのうち考えるか」とスルーした。年金なんて30年後の話だし、今は目の前の家賃と奨学金返済で手一杯だったのも正直なところだ。
それが変わったのは、去年38歳になって会社の確定拠出年金の説明会に参加したとき。担当者が「このまま何もしないと、60歳時点での資産はこうなります」というシミュレーションを見せてくれた。数字を見た瞬間、胃がキュッとなった。
帰宅してから初めてまじめに計算してみた。「2000万円って本当に正しい数字なのか?」から始まって、自分の場合はいくら必要なのかを一から調べた話を書く。
「2000万円問題」の元の計算、実は条件が限定的だった
まず報告書の元データを読んだ。2000万円という数字の根拠は「高齢夫婦無職世帯の毎月の収支」で、月の支出が約26.4万円、収入(主に年金)が約20.9万円、差額が約5.5万円の赤字。これが30年続くと5.5万円×12ヶ月×30年=1980万円≒2000万円、という計算だ。
これを見てすぐ気づいたのは、「この計算の前提が自分に当てはまるとは限らない」ということ。報告書に使われたデータは2017年の総務省家計調査で、対象は「65歳以上の夫婦のみ無職世帯」。持ち家前提で、エンゲル係数も今より低い時代のデータだ。
僕は独身で持ち家なし(賃貸)、60代も何らかの仕事をするつもりがある。この前提が全然違う。
自分でシミュレーションを組んだ
総務省の家計調査の最新版と、自分の現在の生活費を並べて比較した。使ったのは以下の3つ。
- 総務省「家計調査年報」最新版(65歳以上単身世帯のデータ)
- ねんきん定期便(毎年誕生月に届く、年金見込み額が書いてある)
- 金融庁の「人生100年時代の老後の生活費シミュレーター」
ねんきん定期便は、これまで何年も封を開けずに捨てていた。初めてちゃんと読んだら、「50歳未満の方の年金額の目安」として「これまでの加入実績に応じた年金額」と「今後も同様に加入した場合の年金額(見込み)」の2パターンが書いてある。
僕の場合、65歳からの受給見込み額は月約14.2万円(老齢厚生年金+老齢基礎年金合算)。これが出発点。
次に、65歳以降の生活費を考えた。今の月の生活費は約22万円だが、老後は家賃が変わらない(賃貸継続)として家賃7万円を維持しつつ、外食・交際費・服代などが減ると想定して月17〜19万円に絞る想定にした。医療費や介護費の予備として月2万円を積み上げると月21万円。
収入14.2万円−支出21万円=毎月6.8万円の赤字。
65歳から85歳の20年間で補填が必要な額は6.8万円×12×20=1,632万円。さらに介護が必要になった場合の一時費用として300万円を上乗せして、合計約1,900万円という数字が出た。
2000万円よりは少ないが、ほぼ同じ水準だった。「2000万円」は煽りではなかったとわかった。
繰下げ受給で年金を増やせることを知った
計算していて気づいたのが「年金の受け取り方を変えると差が大きい」ということ。
通常は65歳から受け取るが、最大75歳まで繰り下げると、1ヶ月遅らせるごとに0.7%増額される。75歳まで10年(120ヶ月)遅らせると84%増。つまり月14.2万円が月26.1万円になる計算だ。
僕の生活費想定21万円を余裕でカバーできる。ただし繰下げには「75歳まで生きていれば元が取れる」という損益分岐点がある。65歳受給と75歳繰下げ受給の累計額が逆転するのは、計算上81〜83歳ごろ。平均寿命(男性81歳、女性87歳)と照らすと、女性は明らかに有利、男性はギリギリだ。
結論として、70歳受給開始(42%増)が現実的な妥協点だと思っている。月14.2万円が月20.2万円になる。これで毎月の赤字は21万円−20.2万円=0.8万円に大幅縮小する。
iDeCo:会社員が使える最強の節税手段
1,900万円を確保する方法として、iDeCoを本格的に調べた。
iDeCo(個人型確定拠出年金)の最大のメリットは節税の3つの柱。①掛金が全額所得控除、②運用益が非課税、③受取時に退職所得控除または公的年金等控除が適用される。
僕は会社員で企業型DCがないため、月2.3万円まで拠出できる。年間27.6万円。所得税率20%+住民税10%=30%の税率で計算すると、年間27.6万円×30%=8.28万円の節税。これだけで22年間続ければ節税額だけで180万円以上になる。
実際に楽天証券でiDeCoを開始して、楽天・全世界株式インデックス・ファンド(楽天VT)を選択した。手数料は月171円(国民年金基金連合会105円+事務委託手数料66円)のみ。これは加入すれば誰でも払う固定費なので、運用商品の信託報酬をなるべく低くすることが大事だ。楽天VTの信託報酬は0.192%程度。
60歳まで引き出せない縛りがあるが、老後資金として割り切れるならデメリットにならない。むしろ「引き出せない」という制約が貯蓄を確実にするメリットになる。
NISA:非課税で自由に増やす手段
iDeCoと並行してNISAも整理した。2024年から新NISAに変わり、年間最大360万円(成長投資枠240万円+つみたて投資枠120万円)、生涯上限1,800万円まで非課税で運用できるようになった。
iDeCoと違ってNISAは60歳前でも引き出せる。緊急時の備えを兼ねた資産形成として活用できる。
僕の場合、月3万円をつみたて投資枠でオルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)に設定した。年利4%と仮定して22年間積み立てると、積立元本792万円が約1,210万円になる計算(複利効果で約1.5倍)。これとiDeCo分を合わせると、かなりの部分が埋まる。
ただし、これはあくまで期待値の話で、株式投資にはリスクがある。リーマンショック級の暴落が老後直前に来たら目も当てられない。そのため、受給5年前からは株式比率を下げて債券・現金比率を上げる「グライドパス戦略」を取る予定にしている。
実際に必要な額は人によって全然違う
自分でシミュレーションしてみて分かったのは、「2000万円問題」の数字そのものより、前提条件が個人によって大きく異なるという事実だ。
持ち家があれば家賃が消える。配偶者が働いていれば年金が2人分になる。60代も働き続けるなら赤字期間が短くなる。逆に、賃貸を続ける場合・医療費がかさむ場合・長生きする場合は2000万円では足りない。
ねんきん定期便の見込み額を確認して、今の生活費から老後の支出を概算して、差額×年数を計算する。これだけで「自分の必要額」が出る。10年後に後悔しないために、38歳の今年、やっとまともに向き合えたと思っている。
2000万円という数字は煽りでも嘘でもなく、ある程度妥当な目安だった。ただし、それを「どう準備するか」は個人の状況によって全く違う戦略になる。iDeCoとNISAを組み合わせれば、月5〜6万円の積立で20年後に相応の資産が作れる計算が成り立つ。まず自分の年金見込み額を確認することが、全ての出発点だ。
※本記事は個人の体験に基づく情報提供であり、医療的助言ではありません。健康上の懸念がある場合は、医師にご相談ください。
